パキスタン大統領、停戦ラインの住民越境容認を提案 被災者に配慮

【2005年10月19日】

パキスタンのムシャラフ大統領は、帰属をめぐってインドとパキスタンが対立するカシミールの停戦ラインについて、インドの承諾を得たうえで住民の往来を許すという提案を行った。ムシャラフ大統領は、18日被災地ムザファラバードを視察後、記者会見を開き、そのなかでこの提案を公表した。インド側はこの提案を歓迎している。朝日新聞などによると、インド外務省報道官は実施に向け具体的な提案をパキスタンに求めるとしている。

パキスタン統治地区を震源地とする8日の地震により、カシミールでは、インド統治地区・パキスタン統治地区ともに大きな被害を出した。死者は全体で3万人ないし4万人以上と報道され、10日を経過した後でも、国際連合は依然50万人が被災支援を受けていないとしている。日本経済新聞などによれば、住民から、見舞いのため停戦ラインを超えて親族を訪問したいという要望が出ていた。

またAP通信などによると、インドとパキスタンはカシミール地方での両国間の電話回線を復旧させると18日発表した。インド統治地区とパキスタン統治地区の電話回線は1990年からインド政府により切断されていた。また両地区での携帯電話の使用も可能とされることが決まった。インドはまた、両国統治地区の間をつなぐ仮設の無料電話を設置すると発表した。パキスタンの英字紙「ドーン」紙によれば、インド統治地区内の被災地4箇所に電話センターが設けられる。

インドとパキスタンの間では最近は緊張緩和路線がとられており、被災者救済で緊張緩和にはずみがついた形となった。

一方で、両国間の緊張が全くなくなったわけではない。ムシャラフ大統領は18日、パキスタン領内でインド陸軍による被災者救援活動を認めない方針を明らかにした。インドの英字紙「アウトルック」紙によると、ムシャラフ大統領はインドからの支援を歓迎する一方、「インドの軍人はパキスタン領内に入るべきではない。これは微妙な問題である」と語った。また「ドーン」紙などによれば、インド政府は軍のヘリコプターを救援活動に従事させる申し入れを行ったが、パキスタンはインド軍人の越境を拒み機材のみを受け入れるとしたため、インドはこの提案を撤回した。

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