ロシアのリオ五輪参加、競技団体ごとに判断へ - ロシアのドーピング不正を巡り
【2016年7月25日】
国際オリンピック委員会(IOC)7月24日に緊急の理事会を開き、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)によって陸上競技における組織や国家ぐるみのドーピングを認定されているロシアについて、リオデジャネイロオリンピックの全競技で排除するか協議を行った[1]。IOCは協議の結果、既に国際陸上競技連盟(国際陸連)が処分を決めている陸上以外の競技について、「ロシア国内のほかに国外で受けた信頼性のある検査で問題がない場合」、「各国際競技団体が認めた場合」、「過去に一度もドーピング処分を受けていない場合」などの条件をつけた上で、ロシア選手のリオ五輪の参加を認めるとした[2]。IOCは、WADAの報告書ではロシアのオリンピック委員会が組織として不正を隠したとは指摘されていないことを考慮したほか、短期間の表面的な調査であり今後も調査を行うとともに、選手にはチャンスを与えるべきと判断した[3]。またIOCのトーマス・バッハ会長は、記者会見で「国全体の責任と個人の権利のバランスを重視した」と述べたほか、「組織的な不正には責任が伴う一方で、潔白な選手に関してはチャンスを与えるべきだ」と述べている[2]。
今回の決定を受けて、ロシアのヴィタリー・ムトコスポーツ大臣はIOCの決定を評価する考えを示した上で、各競技団体が選手の出場を最大限認めることを期待すると表明している[3]。リオデジャネイロオリンピックのカルロス・ヌズマン組織委員会会長は、「選手の出場はIOCと各競技団体が決めることであり、組織委員会はその決定に従い選手をしっかり迎えたい」と述べた上で、「組織委員会として、ドーピングをなくす政策を支持し、クリーンな選手を尊重する」と述べた[2]。一方で、アメリカアンチドーピング機構のトラビス・タイガート会長は「ロシアの組織的不正に対して、クリーンな選手や内部告発者が勇気を持って対峙してきたが、IOCはリーダーシップを取ることを拒否した。クリーンな選手の権利に大きな打撃を与えるものだ」とした声明を発表し、IOCの姿勢を強く非難した。また、内部告発したユリア・ステパノワ選手の出場が認められなかったことに対して、スポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定に反するもので、今後の内部告発を留まらせるものだ」と批判している[2]。
ロシアのドーピング不正に関しては、ドイツ公共放送連盟(ARD)が2014年12月に放送した番組でロシアの陸上選手が証言したことで明らかになり、2015年11月にはWADAの第三者委員会がロシアの陸上競技に関して組織的不正を認定、国際陸連が暫定資格停止処分を決めていた。今月には、WADAの調査チームがソチオリンピックにおいてドーピング陽性だった選手の検体が変えられていたことを指摘、ロシアが組織的不正を行っていたと認定していた。また、2016年5月にはニューヨーク・タイムズ誌などはソチオリンピックでロシアが獲得したメダルのうち15個あまりに関して不正の疑いがあると報じていた[2]。