BPOの「放送人権委員会」が「明日、ママがいない」について審理対象外と判断
【2014年5月23日】
日本テレビで今年3月まで放送されていたドラマ「明日(あした)、ママがいない」の番組内容が、児童養護施設に通う子供達の人権を侵害しているとして熊本市の慈恵病院が「放送倫理・番組向上機構(BPO)」へ審理申し立てをしていた問題で、BPOの「放送人権委員会」は5月21日に、審理申し立ての対象外とすることを、慈恵病院へ伝えた[1]。決定は「放送人権委員会」より電話で慈恵病院へ伝えられ、討議内容に関しては書類が慈恵病院へ郵送された[2]。
BPOによる事案討議
編集放送人権委員会は5月20日に行われた「第209回委員会」にて、委員会運営規則の第5条に規定されてある「苦情の取り扱い基準」に沿って、該当事案を審理対象として取り扱うかどうかの検討が行われた[3]。児童養護施設の子供や職員の名誉を侵害しているという想定がされていたが[3]、侵害を受けたとされる対象者が特定されていないため、名誉を侵害したかどうかの判断を行うことが出来ないこと(第5条の1-(1)項)[3]。また、受けたとされる不利益の内容が明確でないこと(第5条の1-(2)項)[3]。さらに異議を申立てした慈恵病院が、不利益を被ったと想定される児童養護施設とは直接的な利害関係にあるわけでもないため[3]、申立者としての基準に合致しないこと(第5条の1-(6)項)[3]。これらの判断材料をもって、「審理対象外である」という判断がなされた[3]。なお、今回の事案に関して放送人権委員会はドラマの制作過程で「社会的波紋に対する事前の配慮が必要であったのではないか」という見解を示した[3]。
放送と青少年に関する委員会においても、3月16日の「第156回青少年委員会」で審理対象として取り扱うかどうかの討議が行われている[4]。討議した結果、次第に視聴者に受容される内容に変化していった事が確認されたとして、審理入りは見送られていた[4]。同時に、ドラマによって実際に影響を受けた可能性のある子供が居ると提示された事実を踏まえ、放送と青少年に関する委員会の汐見稔幸委員長より、4月8日付に委員長名義でコメントの公表を行った経緯がある[4]。
慈恵病院の反応
編集慈恵病院はドラマ終了時点でHPへ見解を公開し、「社会的養護」という重く難しいテーマを扱う際に、基準となりうる最低限のガイドライン作りを求めていた[5]。今回の「審理対象外」という判断を受けて慈恵病院は「これ以上はどうしょうもない」と認めつつも[6]、ドラマ制作側の人的・時間的制約にも今回の事態を招いた一因があると考えており、制作体制の議論も深めてもらいたかったと話した[6]。
情報源
編集- ↑ 『朝日新聞デジタル・「明日、ママ」審理対象にせず BPO人権委』 — 朝日新聞, 2014年5月21日
- ↑ 井上直樹 『くまにちコム(熊本のニュース)・BPO「明日ママ」審理せず 慈恵病院の苦情に』 — 熊本日日新聞, 2014年5月22日
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 『放送人権委員会ニューストピックス・「児童養護施設関連ドラマへの申立て」審理対象外と判断』 — 放送倫理・番組向上機構#放送と人権等権利に関する委員会, 2014年5月20日
- ↑ 4.0 4.1 4.2 『青少年委員会議事概要 - 第156回』 — 放送倫理・番組向上機構#放送と青少年に関する委員会(青少年委員会),
- ↑ 『日本テレビ ドラマ「明日、ママがいない」放送終了に当たりまして』 — 慈恵病院,
- ↑ 6.0 6.1 『BPO放送人権委員会 日テレ「明日ママ」は審理対象外 「波紋への配慮必要」』 — 産経新聞, 2014年5月27日
外部リンク
編集- 『放送人権委員会運営規則第3章 - 苦情の取り扱い基準』 — 放送倫理・番組向上機構#放送と人権等権利に関する委員会, 2007年3月14日
- 汐見稔幸 『"子どもが主人公のドラマ"に関する「委員長コメント」』 — 放送倫理・番組向上機構#放送と青少年に関する委員会(青少年委員会), 2014年4月8日
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編集- 日テレドラマ「明日ママ」全スポンサーがCM自粛 放送継続方針は変えず(2014年1月28日)