韓国・警察放水で死亡の男性の解剖検査令状が失効
【2016年10月26日】
大韓民国(韓国)でデモ隊への警察の放水が原因で死亡したとされる男性の司法解剖に関して、警察当局が解剖を執行できぬまま令状の失効満了日である10月25日を迎えた[1]。
ペク・ナムギ(백남기)さんは2015年11月14日にソウルで開かれた米価暴落に反対する「第1回民衆総決起大会」のデモにおいて、警察の放水銃に晒され、昏睡状態で317日間の集中治療室での治療ののち2016年9月25日に死亡した[2][3]。 検察は死因解明のための司法解剖を請求したため、ソウル中央地裁は条件付きの解剖令状を発布したが、遺族は放水銃が原因で死亡したのは明白であるとし解剖を拒否した[4][5]。ペク・ナムギ闘争本部は「解剖を強行すれば阻止するしかない」として解剖反対を表明していた[6]。令状は夜間執行許可を含むもので、反対する市民らは解剖執行から遺体を守る行動を開始していた[6]。
ペク・ナムギさんの死亡診断書を作成したソウル大学病院教授は、「先行死因は急性硬膜下出血急性であり、心肺停止が直接の死因」とし、死因は病死であると明らかにした[7]。また、遺族が延命治療を望まなかったために最善の治療を受けられずに死亡したと述べた[7]。一方でソウル大学内の死亡診断書に関する調査委員会は死因は外因によるものであることを指摘したうえで、「先行死因が急性硬膜下出血であるなら自殺も他殺も外因死となる」とした[7]。
「遺族が延命治療に反対したために死亡に至った」と説明したソウル大学病院教授の発言に対し、遺族とペク・ナムギ闘争本部は反発し、司法解剖に応じないという立場を明確にしていた[8]。そのうえでペクさんの娘は昇圧剤の使用を望まないという意向に反して病院側は昇圧剤投与などの延命治療を続けた点に関して、何らかの外圧があったのではないかとの疑惑を提起した[8]。
タイムリサーチ社の世論調査によると、韓国国民の半数以上がペク・ナムギ氏の司法解剖強行に反対していることが判明している[9]。
令状失効に関して警察当局は「令状の再発行を検討する」と表明した[1]。ペク・ナムギ闘争本部は記者会見において「朴槿恵政権の非道な解剖強行が国民の力で阻止された」とし、遺族は再申請の放棄を主張した[1]。
情報源
編集- ↑ 1.0 1.1 1.2 『故ペク・ナムギ氏の解剖令状が期限満了…市民500人が集まり「私がペク・ナムギだ」』 — ハンギョレ, 2016年10月26日
- ↑ 『[社説]ペク・ナムギ氏の死を機に暴力デモと強制排除の悪循環を終わらせるべきだ』 — 東亜日報, 2016年9月26日
- ↑ 『【社説】ペク・ナムギさんの死はこの時代みんなの痛み=韓国』 — 中央日報, 2016年9月27日
- ↑ 『警察放水で死亡の男性 条件付で司法解剖へ』 — KBS, 2016年9月29日
- ↑ 『ソウル中央地裁「ぺク・ナムギ氏解剖検査条件は勧告規定ではなく義務規定」』 — ハンギョレ, 2016年10月6日
- ↑ 6.0 6.1 『韓国:ペク・ナムギ解剖検査令状発布』 — レイバーネット, 2016年9月29日
- ↑ 7.0 7.1 7.2 『韓国:ソウル大病院、「遺族が積極的治療を望まなかったので死亡...病死と表記」』 — レイバーネット, 2016年10月3日
- ↑ 8.0 8.1 『ペク・ナムギ氏の遺族「主治医ペク教授は無責任…司法解剖に応じない」』 — ハンギョレ, 2016年10月4日
- ↑ 『ペク・ナムギさん司法解剖 国民の半分以上が反対』 — KBS, 2016年10月15日