関東から東海にかけて広く大雨、熱海では土石流が発生
【2021年7月5日】
7月1日から3日にかけて梅雨前線が北上し、西日本から東日本の太平洋側沿岸に停滞した。この前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだことにより、大気の状態が非常に不安定となり、大雨となった。国土交通省のまとめによると、4日14時30分の時点で、土砂災害が全国で11件、うち負傷案件が1件、家屋の一部損壊が3件あった[1]。また、土砂災害警戒情報は12都府県の107市町村に発表され、静岡県熱海市は解除されていない[1]。この大雨の影響で熱海市伊豆山周辺で土石流が発生し、130棟に被害が出た[2]。
気象庁によると、6月30日18時からの降り始めから7月4日16時までの降水量は、静岡県内で伊豆市天城山で569.0ミリ、御殿場で568.0ミリ、森町三倉で540.0ミリ、静岡市有東木で528.0ミリ、富士で522.5ミリを観測した[3]。神奈川県内でも、30日午前11時からの降り始めから4日22時までで、箱根で836.0ミリ、丹沢湖で425.5ミリ、小田原で399.5ミリ、平塚で350.0ミリ、海老名で344.5ミリを観測した[4]。千葉県内の1日午前0時の降り始め4日16時までの降水量が、勝浦で368.5ミリ、木更津で356.5ミリ、館山で343.0ミリを観測した[5]。静岡地方気象台は全35市町に大雨警報を発令し、11市町の計約20万4千世帯、43万2千人に避難指示を発令した[6]。
静岡県内では、7月3日午前、熱海市伊豆山周辺で土石流が発生した[2]。河口から約2キロほどの山中で発生し、全長約1キロ、最大幅は約120メートル、発生した土石流の面積は約12万平方メートルに及んだ[7]。防災科学技術研究所によると、72時間に振った雨は100年に一度の大雨で、長時間にわたって降り続いた雨によって土砂災害が引き起こされたと考えられている[8]。消防庁によると、建物被害は130棟に及んでいるという[9]。県は自衛隊に災害派遣を要請し[10]、地元消防、県警、自衛隊などが4日午前6時から1000人超の体制で救助活動を開始[7]。伊豆山港付近沖合海域では、7月4日日没後も巡視船による捜索活動が行われている[11]。県は4日、土砂崩落が起きた逢初川の最上流部付近に、東西約60メートル、南北約200メートル、高さが最大15メートルほどの約5万立方メートルの盛り土がされていたと発表した[12]。盛り土は大半が崩落し、周辺斜面などを合わせ約10万立方メートルが流れたとみられている [13]。現場にほど近いMOA美術館は、救助拠点として提供することから臨時休館となった[14]。土石流による被害を受けて、台湾の蔡英文総統は、3日夜、自身のツイッターに日本語で「豪雨による土石流などの被害を受けた方々に心からお見舞いを申し上げます。日本の必要な援助を何時でも提供できるように私たちは用意しています」と投稿するなど、台湾以外にも、トルコ外務省や豪州、ウクライナの駐日大使などがお見舞いの言葉を発信している[15]。
神奈川県内では、平塚市内を流れる金目川や鈴川などの水位が上昇し、氾濫が起きている可能性があるとして周辺に災害に関する最大警戒レベルの「緊急安全確保」を発令した[16]。平塚市の住宅街では、車が水につかって動けなくなる被害が発生した[17]。内閣府によると、災害対策基本法の改正で設けられた緊急安全確保が出されたのは全国で初めて[18]。芦ノ湖が氾濫危険水位を3日午前2時に超えたが[19]、大きな被害は免れた[20]。このほか、神奈川県が4日に集計したところ、土砂崩落や崖崩れなどが120件を超えている[21]。
千葉県では、君津市中島の小糸川と鴨川市貝渚の加茂川の観測所でそれぞれ、氾濫危険水位を超えた[22]。また、3日午前0時ごろ、千葉市中央区栄町で増水した葭川に転落した20代男性が行方不明となり、警察と消防で捜索にあたっている[23]。
交通への影響
編集この大雨の影響で、交通に影響が出た。
鉄道
編集- 東海道新幹線:3日午前7時台に運転を見合わせたが、10時45分ごろ、全区間で運転を再開した。その後夜にかけて、断続的に運転を見合わせた[24]。
- 東海道線:小田原~三島駅間の上下線で3日終日運転を取りやめるとともに、小田原~函南駅間は4日午前まで運転を取りやめた[24][25]。
- 相模線:倉見駅で線路が冠水し、寒川~厚木駅間で運転を一時見合わせた[24]。
- その他、御殿場線や身延線も運転見合わせとなった[26]
- 小田急線:小田原線相武台前~小田原駅間、江ノ島線大和~藤沢間で運転を一時見合わせた[24]。
- 京急線:神奈川新町~浦賀駅間、金沢八景~逗子・葉山間で、堀ノ内~京急久里浜駅間でそれぞれ運転を見合わせていたが、3日午後6時までに運転を再開した[24]。
- 小湊鉄道:光風台~上総牛久駅間で路盤流出のため、4日現在も運転を見合わせている[1]。
- 内房線:君津~大貫駅間の上下線で3日に一時運転を見合わせた[27]
- いすみ鉄道:3日に一時運転を見合わた[27]
道路
編集- 東名高速や新東名高速は3日午前から神奈川県から静岡県にかけての複数区間が全面通行止め[25]。
- 中部横断道も上り線の新清水ジャンクションから富沢インターチェンジ間で通行止めとなった[26]
- 館山自動車道は、木更津市羽鳥野で崖崩れにより、車線の一部に土砂が流出し、通行止めとなった[28]。
- 国道135号は、伊豆山地区の土石流による土砂流入により通行止め[1]。
- 国道246号は、神奈川県松田町内が3日午前8時ごろから土砂崩れのため通行止めとなった[20]。静岡県小山町棚頭から同町生土までの6.2キロが上下線とも通行止めとなった[25]。
- 静岡県内の国道・県道は、43路線60カ所が通行止となった[25]。
- 静岡県道380号富士清水線の黄瀬川大橋が損傷し、通行止めとなった[29]。
航空
編集船舶
編集駿河湾フェリー、神新汽船、伊豆クルーズが2日朝から全便欠航した[6]。
情報源
編集- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 『梅雨前線に伴う大雨による被害状況等について(第2報)令和3年7月4日16:00現在』 — 国土交通省, 2021年7月4日
- ↑ 2.0 2.1 『被害130棟、捜索難航 2人死亡、安否確認急ぐ―盛り土流出・熱海土石流・静岡』 — 時事通信, 2021年7月4日
- ↑ 『大雨に関する静岡県気象情報 第18号』 — 気象庁, 2021年7月4日
- ↑ 『大雨と高波及び雷に関する神奈川県気象情報 第18号』 — 気象庁, 2021年7月4日
- ↑ 『大雨に関する千葉県気象情報 第12号』 — 気象庁, 2021年7月4日
- ↑ 6.0 6.1 『静岡県内各地で大雨 避難指示40万人余 土砂災害警戒呼び掛け』 — 静岡新聞, 2021年7月2日
- ↑ 7.0 7.1 『熱海土石流 死者3人に、救助は23人 建物被害130棟』 — 毎日新聞, 2021年7月4日
- ↑ 『2021年7月3日熱海市の土砂災害における降雨の特徴(速報)』 — 国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門, 2021年7月3日
- ↑ 『令和3年7月1日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況(第7報)』 — 消防庁災害対策本部, 2021年7月4日
- ↑ 『大雨 熱海市で土砂崩れ発生 土石流で家屋多数流されたか』 — 静岡新聞, 2021年7月3日
- ↑ 『土石流流出災害関連(熱海市伊豆山港付近)』 — 第三管区海上保安本部, 2021年7月3日
- ↑ 『開発用?盛り土が土石流の原因か 10万㎥土砂の半分占める 川勝知事「目的や工法の検証を」』 — 東京新聞, 2021年7月4日
- ↑ 『崩落現場に盛り土 知事「検証する」―静岡・熱海』 — 時事通信, 2021年7月4日
- ↑ 『臨時休館のお知らせ』 — MOA美術館, 2021年7月4日
- ↑ 『熱海の土砂災害受け、海外からメッセージ 台湾総統ら』 — 朝日新聞, 2021年7月4日
- ↑ 『平塚市、金目川沿いなどにレベル5の「緊急安全確保」』 — 神奈川新聞, 2021年7月3日
- ↑ 『静岡で住宅流される 太平洋側で記録的大雨、被害広がる』 — 朝日新聞, 2021年7月4日
- ↑ 『東海や関東中心に大雨 初の「緊急安全確保」発表―新幹線や東名高速に影響』 — 時事通信, 2021年7月3日
- ↑ 『神奈川県内14市町に土砂災害警戒情報 横浜などで避難指示』 — 神奈川新聞, 2021年7月3日
- ↑ 20.0 20.1 『神奈川県内 大雨による土砂崩れ、冠水相次ぐ 小田原では住宅1棟全壊』 — 東京新聞, 2021年7月4日
- ↑ 『記録的大雨の土砂崩落、神奈川で120件超 住宅浸水も続発』 — 神奈川新聞, 2021年7月4日
- ↑ 『【速報】千葉県内各地に土砂災害警戒情報 警戒対象地域、一時30市町に 小糸川など氾濫危険水位超えも』 — 千葉日報, 2021年7月3日
- ↑ 『「友人が流された」千葉市で川に転落した男性行方不明 川は大雨で増水』 — 千葉テレビ放送, 2021年7月4日
- ↑ 24.0 24.1 24.2 24.3 24.4 『神奈川の鉄道路線、運転見合わせ相次ぐ 記録的大雨の影響』 — 神奈川新聞, 2021年7月3日
- ↑ 25.0 25.1 25.2 25.3 『高速で通行止め 鉄道ダイヤ乱れ 静岡県内大雨、多方面に影響』 — 静岡新聞, 2021年7月3日
- ↑ 26.0 26.1 『静岡県内大雨 高速道、交通機関への影響(3日午後6時現在)』 — 静岡新聞, 2021年7月3日
- ↑ 27.0 27.1 『千葉県3日 大雨による「土砂災害」に警戒 河川の増水や氾濫にも注意を!』 — 千葉テレビ放送, 2021年7月4日
- ↑ 『木更津で観測史上最大348ミリ 千葉県内豪雨 土砂崩れ、交通に乱れも 地盤緩み「厳重警戒を」』 — 千葉日報, 2021年7月3日
- ↑ 『静岡県内大雨、黄瀬川大橋が損傷 沼津市大岡で住宅1棟流される』 — 静岡新聞, 2021年7月3日