大相撲・先代時津風親方ら逮捕 弟子に対する暴行死

【2008年2月8日】

弟子に対する暴行死の容疑で逮捕された山本容疑者。写真は先代時津風親方だった時代の2006年春場所=会場:大阪府立体育館、勝負審判員を担当していた時の様子(中央部。GFDL)

時事通信によると、大相撲名古屋場所が行われる前の2007年6月、時津風部屋の序の口力士だった当時17歳の少年が稽古中に急死した事件で、愛知県警捜査一課などは2月7日、当時の時津風親方だった57歳の男と、兄弟子3人を傷害致死の疑いで逮捕し、犬山警察署に捜査本部を設置した。過去に相撲部屋の親方が刑事責任を問われたケースとしては、武蔵川部屋の親方が元力士を負傷させて傷害容疑で書類送検になったケースはあるものの、力士の死亡事件では初めてのことである。

時事と朝日新聞によると、逮捕されたのは元小結双津龍(ふたつりゅう)・時津風親方こと無職の山本順一(57歳)と、兄弟子の明義豊(あきゆたか 本名:木村正和 24歳)、怒涛(どとう 本名:伊塚雄一郎 25歳)、時王丸(ときおうまる 本名:藤居正憲 22歳)の4人の容疑者

時事によると、この事件は2007年6月25日の昼から26日の午前中に犬山市の寺院を宿舎にしていた時津風部屋の部屋や土俵で、当時序の口力士だった時太山さん(ときたいざん 本名:斉藤俊=たかし 当時17歳)が脱走を繰り返したことを受けて、山本容疑者らが時太山さんを継続的に金属バットなどで暴行を加え、外傷性ショックで死なせた疑いがもたれている。

特に25日の夜には山本容疑者が宿舎で時太山さんを叱った上でビール瓶で額を殴り、更に上述の兄弟子らに指示して殴る・蹴るの暴行を加えさせ、土俵近くの柱に縛り付ける行為を行った。また26日の午前11時ごろからの「ぶつかり稽古」も通常の5分を超える30分かけて行った。その際、山本容疑者が時太山さんを木の棒で殴り、兄弟子も蹴り上げていた。この後、時太山さんは体調不良で病院に搬送されたが死んだ。時太山さんの死因については新潟大学や組織検査を嘱託されている名古屋大学でも「多発外傷による外傷性ショック死」と鑑定結果が出た。それを受け、捜査一課などは検察当局と協議し、これらの行為は稽古やしつけの範囲を逸脱した制裁であるとし、傷害致死に問えると判断した。

また山本容疑者も時太山さんの死亡前日に暴行を加える前に、「教えてやれ!!」、「鉄砲柱にしばり付けろ!!」といった言葉を兄弟子にかけたり、ぶつかり稽古も山本容疑者の指示によるものだったことから、共犯に問えると判断した。

時事と朝日によると、調べに対し、山本容疑者はビール瓶での暴行は認めているものの、「部屋を逃げ出したことに対して怒ったことで殴ったわけではない」として犯意は否認している。また朝日によると、同時に逮捕された兄弟子3人のうち明義豊こと木村容疑者も暴力の実行は認めながらも「制裁でなくしつけのつもりだった」と犯意を否認している。他2名は容疑・犯意を大筋で認めている。

朝日によると、日本相撲協会は2月7日夜、両国国技館北の湖理事長ら協会幹部4人がこの逮捕を受けて会見を行い、北の湖理事長は「長い相撲史の中で逮捕者が出たことは遺憾であり残念」と話すとともに、逮捕された兄弟子3人については「司法判断の推移を見守って必要な対応をしたい」として、現在の段階で処分を科す事をしないことを明らかにした。

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