北朝鮮元工作員、衆議院で意見陳述

【2005年8月1日】 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の工作員だった安明進(アン・ミョンジン)さんは7月28日、衆議院拉致問題特別委員会に参考人として招致され意見陳述し、北朝鮮による拉致事件の解決には、経済制裁が必要だなどと話した。6か国協議については、池坊保子(いけのぼうやすこ)衆議院議員(公明)の質問に対し、6か国協議に出席する他国は、北朝鮮に対して弱腰になっているのではないかと思うと答えた。

安明進さんは意見陳述後に拉致被害者家族と記者会見を開き、6か国協議で日本政府が拉致問題を前面に打ち出すよう訴えた。日本の国会で北朝鮮の元工作員が意見陳述するのは、今回が初めて。

共同通信によれば、安明進さんの意見陳述に対し、帰国した拉致被害者のひとり蓮池薫さんは、29日コメントを出して事実の正誤を指摘した。安明進さんが朝鮮労働党中央委員会直属政治学校(現金正日政治軍事大学)で蓮池薫さんを目撃したとする発言に対し、「金正日政治軍事大学にいたことはない。従って安氏にお会いしたことはない」としている。

意見陳述の要旨

  • 「1987年、北朝鮮のスパイ養成機関である朝鮮労働党中央委員会直属政治学校(今の金正日(キム・ジョンイル)政治軍事大学)に入った」
  • 「1993年に韓国へ亡命した後、1997年の横田めぐみ(よこた めぐみ)さんを金正日政治軍事大学で目撃したことや、日本での工作活動などについて常に証言してきた。1988年10月から1991年初めまでに直属政治学校で目撃した11人の日本人は、横田めぐみさん、市川修一(いちかわ しゅういち)さん、増元るみ子(ますもと るみこ)さん、蓮池薫(はすいけ かおる)さん、田中実(たなかみのる)さん、北海道から来たという朝鮮語の下手な男性、加藤久美子(かとう くみこ)さんなど。これに加え、915連絡所(軍事病院)にいた古川了子(ふるかわ のりこ)さん、警備兵だった寺越武志(てらこし たけし)さん、訓練所にいた女性を目撃した。田口八重子(たぐち やえこ)さんは、1991年まで生きていたという直接的情報がある」
  • 「この合計15人のうち、北朝鮮が拉致を認めているのは5人のみだ。日本政府が認めているのも6人だけで、残念だ。救う会は寺越武志さん、古川了子さん、加藤久美子さんを拉致被害者と認定しているのに、日本政府はなぜまだ認定しないのか」
  • 「日本人拉致は、工作員たちの自慢の種になっている。金正日政治軍事大学のオ・グホ講師は「寺越さんとそのおじさんたちを能登半島で拉致したが、そのうち1人が要求を受け入れなかったので射殺した」と話していた。私は能登半島の現場を見て、この話は本当だと思った」
  • 「拉致された日本人は、工作員に日本語を教える日本語教官になっている。生活は工作機関の外部と隔離され、子供に拉致されたことは秘密にさせられていた。子供は、初等教育を受けるようになると親元から離された」
  • 「金正日の犯罪は、大韓航空機爆破事件や私の亡命とともに、世の中に知れ渡った」
  • 「私が亡命・証言した当初、日本国民や政府は批判的だった。北朝鮮は韓国政府のでっちあげだとした。しかし、救う会や拉致被害者家族は私を信じ、活動を続け、金正日に謝らせるに至った」
  • 「金正日は拉致の首謀者を明かさず日本人を愚弄している。金正日の嘘の1つは、私が目撃した市川修一さんと増元るみ子さんを死亡したとしていることだ。また、田中実さん、寺越武志さん、古川了子さん、そして爆破訓練所の女性の拉致も認めていない。田口さんは、1991年頃まで生きていたと金正日政治軍事大学のハン教官から聞いた」
  • 「北朝鮮にいたとき、日本人拉致被害者の名前は知らなかったが、顔や特徴は今でも覚えている」
  • 「北朝鮮にいる日本人は、私が目撃した人だけではない。拉致された日本人は30人になるとも聞いた」
  • 「拉致被害者は、自分たちが救い出される日を待っている。ところが、拉致被害者を救い出すべき日本が、北朝鮮工作機関が決心さえすればもっと日本人を拉致できるように、工作資金と工作装備まで供給してやっているのが現状だ」
  • 「国会議員や日本国民に、悪魔である金正日と戦う覚悟が無ければ、拉致問題は解決できない。その戦いが弱いために、今でも北朝鮮は工作機関を完全には解体しないで、新しい工作船基地を造築しつつある」
  • 「もっとも強力な手段は、経済制裁だ。日本政府が僅かな動揺もなく経済制裁に踏み切るとき、金正日は日本人を恐れ、真摯な姿勢になると確信している。日本政府の経済制裁は、金正日政権への脅威になるのであり、殺人独裁のない人間らしい世の中で暮らしたいと願う2300万住民の大きな望みでもある」
  • 「長く北朝鮮で暮らし韓国へ亡命した7000人余りの脱北者も、韓国政府の太陽政策は疑わしく、北朝鮮政府を生かすものだと話している。元高官も、北朝鮮が韓国から受けている経済支援は、政権が崩壊しそうなときにリンゲルを打つような効果を生み出しており、なぜ韓国政府が経済支援するのかと言っている」
  • 「日本政府が北朝鮮に経済制裁を行わないということは、北朝鮮にいる拉致被害者を救い出さず、そのままにしておくということを意味している」
  • 「北朝鮮の韓国に対する警備は、相当厳しい。しかし、北朝鮮は1960年以降4000人を拉致していて、500人はそのままだ」
  • 「日本海周辺は鉄条網に囲まれていない。13人以外拉致されていないとしていること自体が問題。北朝鮮の工作員は口々に、韓国行くのは大変だが、日本は食事の途中でちょっとトイレに行って来るようなものだと話していた」
  • 「日本という国自体を馬鹿にする北朝鮮に経済支援をするということは、日本国民のためにも北朝鮮の人民のためにもならない」

出典

 
Wikipedia
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