作曲家・佐村河内守氏の楽曲、実は他人に委託していた

【2014年2月6日】 産経新聞によると、広島への原爆投下による大空襲の「被爆2世」で、両耳の聴覚がない作曲家として知られた佐村河内(さむらごうち)守氏(50歳 横浜市在住)が作曲したとされる主要楽曲の多くが、佐村河内氏本人ではなく、別の音楽家に依頼していたことを、佐村河内氏の代理人の弁護士が2月5日未明明らかにした。この中には「交響曲第1番 HIROSHIMA」や、高橋大輔選手がフィギュアスケートソチオリンピックショートプログラムで演じるときに使用するとしている「バイオリンのためのソナチネ」も含まれていたという。

東京新聞が佐村河内氏の代理人の話として伝えたところでは、「作曲した人物の側にも、作曲者として表に出辛い事情があると聞いており、佐村河内氏が自らを単独の作曲家として表記するようになった」としており、佐村河内氏本人も、「言い訳のできないこと」と深く反省している。佐村河内氏は聴覚がないことから、「現代のベートーベン」とたたえられ、マスコミでも数多く取り上げられていた。公式サイトによれば、佐村河内氏は高校生の頃から聴覚障害を患い、30代半ばで完全に聴覚を失い聞こえない状態となっていたが、このころから、映画やテレビゲームの音楽の作曲を手掛け、NHKのテレビ番組「NHKスペシャル」においても「魂の旋律~音を失った作曲家」と題した佐村河内氏を主人公としたドキュメンタリーが製作された他、情報・報道番組でも取り上げられた。しかし、この他人への作曲委託問題を受けて、NHKは2月5日放送のニュース番組で過去の取材過程でそれに気付けなかったとして、謝罪放送を行った。また「NHKオンデマンド」でも先述の「魂の旋律」の配信を取りやめた。

CD、楽譜、書籍の発売やコンサート開催も中止 影響広がる 編集

NHK[1]によると、今回の他人への作曲委託問題を受けて、佐村河内氏のCDやDVDを販売してきた日本コロムビアは2月5日、同氏の商品に関してレコード店への出荷やインターネットでの楽曲配信を停止することを決めた。また同氏作曲とされていた交響曲を演奏する全国ツアー(2シリーズ)も去年6月以後開催されており、今後2月23日に長崎市で行われる予定だった公演を含む19の公演について「2つの全国ツアーはいずれも佐村河内氏作曲と銘打たれており、別人が作曲したとなると公演続行ができない」として、今後の公演をすべて取りやめ、チケットについても払い戻しを行うとしている。

スポーツニッポンによると、コンサートを企画している「サモンプロモーション」は公式サイトで「本日、佐村河内氏の楽曲に関して、作曲行為を特定の第三者によって行われたということを報道により知らされました。弊社はその事実を知らされずに公演を企画・実施しており、この事実に驚がくし、大きな憤りを感じております」と述べている。

またNHK[1]によると、講談社が2007年に単行本として出版し、2013年に文庫版として幻冬舎から出版された「交響曲第一番」という佐村河内氏の自伝書についても、今回の発表を受けて絶版にすると共に、現在書店に出荷されている単行本については発売を中止・回収する予定でもある他、2月11日発売予定の佐村河内氏の楽譜の出版も取りやめられることになるなど、今回の問題による影響が広がりを見せている。

またNHKの別の記事[2]によると、佐村河内氏に対し、広島市から6年前(2008年)に「一切の聴覚を失ったものの、作曲活動を続けて、世界で高く評価された」として「広島市民賞」を贈呈しているが、今回の問題を受けて、松井一實市長は「もし事実であれば、大変残念なことだと思います。市民賞を授与した根拠が覆るような事態が判明すれば、(市民賞を)取り消さなければいけなくなると思う」として、同賞の表彰取消も検討していることを明らかにしている。

情報源 編集

  1. 1.0 1.1 「別人が作曲 ツアー中止など影響広がる」より
  2. 「別人が作曲 授賞取り消し検討も」より

参考リンク 編集