ヨウスコウカワイルカがほぼ絶滅―「種の存続」に必要な数以下に減少

【2006年12月17日】

ヨウスコウカワイルカの生息域(揚子江中下流)の地図。三峡ダム(Three Gorges Dam)より下流に生息していると考えられている。

CNNなどによると、中国・日本・スイス・アメリカ・チリなどの研究機関で構成する共同調査隊は、揚子江(長江)に生息するヨウスコウカワイルカ(学名Lipotes vexillifer)が絶滅した可能性が高いと発表した。ヨウスコウカワイルカは2004年8月以来目撃された例が無く、今年8月から6週間かけて行われた調査でも、1頭も発見されなかった。

Baji.orgによると、今年8月の調査では、河北省宜昌市の三峡ダム付近から河口の上海市付近までの約3,500kmを2台の監視船で光学機器、音響探査機器などを使い調査したが、1頭も見つけることはできなかったという。CNNによれば、仮に見つけられなかっただけであるとしても、生存しているのは「種の存続」に必要な20頭前後以下だろうという。

1980年代に約400頭いたと見られているヨウスコウカワイルカが激減した原因には、中国の経済発展により船の交通量が増えたことや、不法な捕獲、水質の悪化、三峡ダムの建設などが考えられている。20年以上の間、中国政府と科学者の間で保護が話し合われ、保護組織も設立され数頭が保護されたが、ほとんど成功しなかった。ヨウスコウカワイルカが絶滅したとみなされれば、クジラ目として有史以来はじめての種の絶滅である。またその場合、生息地環境破壊による大型哺乳類の種の絶滅は、ヨウスコウイルカがはじめてとなる。

現在カワイルカは4科5種が確認されているが、アジアに生息するヨウスコウカワイルカ(2006年版レッドリストにおいて「絶滅寸前」)、ラプラタカワイルカ(「情報不足」)、インドカワイルカ(2種とも「絶滅危機」)の3科4種はいずれも絶滅の危機にあり、南アメリカに生息するアマゾンカワイルカも「脆弱」に分類されるなど、いずれの種も絶滅の可能性が高いとされている。

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