チュニジア大統領が国外脱出、23年に亘る独裁政権に幕
【2011年1月15日】
朝日新聞によると、大規模な反政府デモが継続的に行われていたチュニジアで14日(現地時間UTC+1。以下同様)に、ベンアリ大統領(74歳)が国外に脱出し、23年間続いた強権政権が崩壊した。
朝日新聞・読売新聞の両報道によると、これを受け、ガンヌーシ首相(69歳)が同日、大統領権限を暫定的に引き継ぐことを宣言した。朝日新聞によれば、ベンアリ政権を支えてきたガンヌーシ氏に対し市民の多くは拒否反応を示しており、情勢が沈静化するかどうかは不透明な情勢である。中東には強権的な長期政権を布く国が多く、今回の政権崩壊劇を受け、影響が拡大する可能性もある。
読売新聞によると、ベンアリ氏は15日未明にサウジアラビア・ジッダに到着した。事実上の亡命と見られている。サウジアラビア王室は、ベンアリ氏の到着を歓迎するとの声明を発表した。
朝日新聞によると、チュニジア全土には14日から非常事態宣言と戒厳令が発令され、空港も閉鎖。首都・チュニスなどでは、深夜になって中心地から人通りが消えたものの、散発的に銃声が聞こえており、略奪なども発生している模様である。
朝日新聞によると、2010年12月中旬に、高い失業率や物価高への抗議のために始まったデモは、治安当局による強圧的鎮圧が元で猛反発を招き、参加者を増加させながらチュニジアの各地に拡大。強権体制を敷いてきたベンアリ氏に批判の矛先が向かい、ベンアリ氏の退陣を要求する声が高まった。デモ隊と警官隊との衝突により、同国政府発表で23人、人権団体の集計で60人超の死者が出た。
ベンアリ氏は当初デモを「テロ行為」などとして批判していたものの、12日には内相を更迭すると発表し、翌13日にはテレビ演説で言論の自由の拡大や食料品価格引き下げ、任期が切れる2014年の政界引退などを約束して沈静化をはかったものの、国民の抗議を抑えられず、14日には数千人が内務省を包囲しベンアリ氏の即時退陣を要求。ベンアリ氏は同日夕方に、全閣僚の更迭ならびに、半年以内の選挙実施を発表したものの、間も無くベンアリ氏の国外脱出の報道が流れ、これを受け、ガンヌーシ首相が大統領権限を暫定的に引き継ぐことを発表した。
読売新聞によると、在チュニジア日本大使館は、186人の在留邦人(2010年10月時点)らの安否の確認を行っている。同大使館によれば、日本から団体旅行で同国を訪れている4グループの日本人参加者が、チュニスなどのホテルで足止めを受け、外出できなくなっているといい、その人数は合計160人を超えると見られている。15日現在、トラブルに巻き込まれたとの情報は無いという。
情報源
編集- 貫洞欣寛(asahi.com) 『チュニジア大統領がサウジに脱出、強権政権が崩壊』 — 朝日新聞社, 2011年1月15日
- 田尾茂樹(YOMIURI ONLINE) 『チュニジア大統領が国外脱出、87年から独裁』 — 読売新聞社, 2011年1月15日