アイルランド: 政治家死亡記事の誤報に波紋

【2005年10月26日】 22日モスクワで事故死したアイルランドの政治家、リアム・ラウラー元下院議員(61)の死亡記事に一部新聞で誤報があり、波紋を呼んでいる。

報道によれば、ラウラー氏はモスクワを訪問中、交通事故に遭い、ラウラー氏と運転手が死亡、後部座席にいた女性が負傷した。23日の英「ガーディアン」はこれを、「19歳のウクライナ人女性が後部座席にいた」「女性とラウラー氏には長年の付き合いはなかったとモスクワの警察官が語った」と伝えたが、同日のアイルランドの日曜紙「サンデー・インディペンデント」、英「オブザーバー」は、この女性を10代の売春婦と形容した。

この女性は、実際には、32歳のウクライナ国籍の女性だった。プラハの法律事務所にアシスタントとして勤めており、ラウラー氏の旅行に通訳として同行していた。ラジオ局RTEによると、ラウラー氏の遺族は23日午後声明を出し、「サンデー・インディペンデント」と「オブザーバー」の「売春婦が同乗」という記述に抗議した。

「サンデー・インディペンデント」は、23日中に同紙ウェブサイトトップページからこの記事へのリンクを撤去した。また「アイリッシュ・イグザミナー」によれば編集長などが公式にラウラー氏の遺族へ謝罪を行った。一方、「オブザーバー」は、記事はモスクワの警察からの情報を正確に載せたもので、他の情報との矛盾はなかったとする声明を出した。「アイリッシュ・イグザミナー」によればアイルランドの全国ジャーナリスト組合の書記は、この問題を憂慮するコメントを行い、両者の対応について、「サンデー・インディペンデント」の謝罪には満足しているがまだ対応が足りない、「オブザーバー」の声明は「傲慢」であるとコメントした。

またバーティ・アハーン首相ら、閣僚なども、この誤報に強い不満を表明し、マスコミの過熱する競争に警鐘を鳴らした。「アイルランド・オンライン」などによると、マクドゥーエル法相は、年末までに報道機関への苦情を扱う委員会を発足させる考えを24日明らかにした。24日の「アイルランド・タイムズ」は、アイルランド全国新聞社協会が23日「独立の苦情取り扱い機関を設ける」旨声明を出し、この機関についての書類と倫理基準がすでに法相に届け出済であると述べたと伝える一方、自社はこの声明について事前に相談を受けていないと注記している。

インディペンデント紙によると、ラウラー氏は長年下院議員を務めたが、アイルランド政界でも有数の汚職政治家として知られ、収賄の罪で三回収監されたことがある。2002年に現金の収賄を告発され、圧力により議員を辞職していた。

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