「東京都内最高齢111歳」の老人、30年以上前に死んでいた? 自宅に遺体見つかる

【2010年7月30日】 朝日新聞によると、東京都内戸籍上の最高齢者・111歳となるはずの加藤宗現(かとう・そうげん)さん(足立区)が約30年前に死んでいた疑いがあることが、同新聞が千住警察署へ取材して明らかになった。加藤さんは1899年(明治32年)7月22日生まれで、81歳の長女の一家と一緒に暮らしていたとされている。

朝日が千住署に取材したところでは、足立区からこの6月千住署に「加藤さんが本当に生きているのか確認が取れない」との旨の問い合わせがあり、7月28日に千住署員が自宅を訪れて調べたところ、加藤さんと見られる遺体が見つかった。その前の26日夕方、千住署員と足立区役所の職員らが加藤さんの長女やの53歳の女性に自宅の立ち入りを求めたが、「おじいちゃん(=加藤さん)は誰も会いたくないと言っているので会わせられない。何十年も病気にかかっていません」と説明し、署員らの立ち入りを拒んだ。その後28日午前になって孫が千住署を訪ねて「祖父(=加藤さん 以下同)は30年前に『即身成仏(そくしんじょうぶつ)したい』と言い出して1回の部屋に引きこもった。祖父は厳しい人だったので部屋に入ることが出来なかった」と明かした。見つかった遺体は1階寝室のベッド上で見つかり、下着や肌着をつけて、毛布がかけられた状態。また遺体は一部白骨化した状態でミイラ化していた。同じく朝日の別の記事によると、遺体を司法解剖したところ、目だった外傷は無く、死亡時期や死因は判らなかった。

読売新聞によると、加藤さんの妻(元教師)は2004年8月に既に死んでおり、加藤さん名義の銀行口座には、死亡後から今年6月まで妻の遺族共済年金として約940万円が振り込まれており、そのうちの約270万円が引き出されていたという。年金申請時、加藤さんは既に死亡していたと見られており、年金の不正受給の疑いがあるとみて調べている。足立区は都を通じて厚生労働省に最高齢者の報告を行っており、加藤さんは足立区内で最高齢とされていた。しかしここ数年は住民票で確認した氏名と生年月日だけを伝えただけで、2008年と2009年には健康高齢者表彰の記念品の商品券書留で送っていたという。足立区は「(加藤さんが)最後に生存を確認できたのがいつかはわからない」と説明した。

また朝日によると、部屋の室内からは1978年11月5日付け新聞と同11月9日付け足立区報がみつかったという。また孫の女性は「今年3月に祖父の部屋をのぞくと、祖父の頭の骨が見えた」と証言していることもわかった。

産経新聞によると、この問題を受けて取材に答えた公立学校共済組合は「びっくりした。規定上、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)にしたがって事務処理せざるを得ない」と困惑した。「住基ネット上で生存が確認されてれば、たとえ150歳でも200歳でも支給せざるを得ない」という。通常、同組合は年金を支払うに際して、その直前に住基ネットを照らし合わせて受給者の生存を確認するが、電話や直接訪問はしない。また遺族年金開始の請求も郵送で行われたので、「一度も本人(加藤さん)には会っていない」と話している。また加藤さんは遺族年金の支給前に老齢福祉年金も受給しており、日本年金機構の説明では「過去の台帳が無いので受給をいつ始めたかは不明だが、制度が始まった1961年(昭和36年)から受け取った可能性がある」と指摘している。

産経によると、加藤さんに支払われた年金が詐取だったかどうかは警視庁の捜査の判断に委ねられるが、死んだ家族が生存しているように見せかけて遺族が年金受給を受け取る詐欺行為はこれまでも多発しており、以下の逮捕事例がある。

  • 2003年(平成15年)6月 警視庁OBの父親が死んでいたのを隠し、警察共済組合の退職年金約440万円を詐取した疑いで、その息子が逮捕。
  • 2008年(平成20年)12月 軍人恩給の受給者だった母親の死亡を隠して約150万円を不正受給したとして、仙台地検有印公文書偽造と同行使の容疑で娘を逮捕。
  • 2009年(平成21年) 沖縄県うるま市で既になくなっていた祖母を生きているように見せかけて老齢福祉年金約68万円を不正受給したとして詐欺の疑いで孫の男夫妻が沖縄県警に逮捕。

情報源

編集