ポーランド大統領選、レフ・カチンスキ氏が当選

【2005年10月24日】

23日行われたポーランド大統領選第2回投票で、保守政党「法と正義」のレフ・カチンスキ候補が当選を決めた。AP通信によれば、最終集計で、カチンスキ候補が54パーセント、ドナルド・タスク候補が46パーセントの得票を得たとポーランド選挙管理委員会が発表した。

第1回投票では、カチンスキ候補は34%を得たが、中道右派「市民プラットフォーム」党首のタスク候補は37%を得ており、逆転勝利であった。第2回投票前の世論調査でも、ドナルド・タスク候補が当選確実という予測が示されており、カチンスキ陣営には思いがけない勝利となった。

カチンスキ候補は、アレクサンデル・クワシニフスキ大統領の後任となる。クワシニフスキ大統領は10年ポーランド大統領を務め、再選禁止規定のため今回の選挙には出馬していない。

カチンスキ次期大統領は、56歳。現ワルシャワ市長で弁護士資格をもつ。ポーランドの政治体制を改変し、共産党政権以後続いてきた「第三共和国」にかわる「第四共和国」を創設したいとする構想をもっている。「法と正義」のヤロスラフ・カチンスキ党首とは双子の兄弟で、多くのポーランド人が2人がともに指導力を発揮し、政界の汚職や腐敗を浄化することを期待している。ロイター通信によれば、ポーランドは2005年各国政治腐敗度ランキングでヨーロッパ最下位の世界第70位にランクされている。

ロイター通信は、出口調査に基づき、カチンスキ候補の年金政策の堅持や、対ドイツ政策での協調を前提とするもののやや強硬な路線などの公約が、低所得者層や年金生活者などに支持されたと伝えている。いっぽう、市場開放策や経済改革を掲げたタスク候補の敗北から、市場はポーランドに対して不安を持ったと伝えている。ポーランドは現在ユーロ圏に参加していない。タスク候補はユーロ圏参加による経済活性化を目標に、いっそうの経済改革を行うとみられていたが、カチンスキ候補はむしろ欧州圏への統合に一定の歯止めをかけ、低所得者やキリスト教つまりカトリック的価値観に重心をおく政策を唱えている。

AP通信によれば、月曜日、当選を決めたカチンスキ次期大統領は、欧州連合加盟国であることとアメリカとの協調関係を外交の基本とすると語った。ロシアとの関係がここ数年冷却状態にあるポーランドにとって、安全保障上アメリカとの関係は重要であると、AP通信は指摘している。カチンスキ次期大統領はまた、EU加盟国としての役割とアメリカとの関係は、ドイツおよびロシアとの関係においてきわめて重要であるとの認識を示した。隣国であるドイツとロシアとの関係は、ポーランド外交において、伝統的に大きな比重を占めている。

また月曜には、「法と正義」「市民プラットフォーム」による連立政府の閣僚協議が始まったとAP通信は伝えた。下院第1党および第2党である両党は連立で合意しているが、閣僚協議は大統領選が終わるまで凍結されていた。ロイター通信など報道各社は、大統領選の勝利は連立協議における「法と正義」の立場をいっそう強めたと観測している。両党の政策は、政界の腐敗浄化などで一致する一方、税制、経済政策で隔たりがあり、連立協議ではこれらの政策のすりあわせも大きな焦点となる。「市民プラットフォーム」は個人への税率を一律とすることを公約としていたが、すでにこれを断念する旨表明している。

ブルームバーグは、カチンスキ次期大統領が、タスク氏の下院議長就任を望むと23日語ったと伝えた。ポーランドでは憲法上、下院議長は大統領に次ぐ地位にある。また「法と正義」は「市民プラットフォーム」が19日提示した下院議長人事案を拒否していた。

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