「ネアンデルタール人のゲノム断片の解読と解析に成功」の版間の差分

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[[Image:Homo_sapiens_neanderthalensis.jpg|thumb|180px|ネアンデルタール人の頭蓋骨。フランスのラ・シャペローサンで1908年に発見されたもの(写真:[[Commons:User:Luna04|Luna04]]・資料)]]
{{日付|2006年11月17日}}
ドイツとアメリカ合衆国の研究グループによって、[[w:ネアンデルタール人|ネアンデルタール人]] ''Homo neanderthalensis'' の[[w:ゲノム|ゲノム]]の一部解読された。両グループの研究結果は11月16日の英ネイチャー誌と11月17日の米サイエンス誌に報告された。今回の解読は全遺伝情報を網羅したものではないが、化石標本からの[[w:ゲノムプロジェクト|ゲノム解析]]が可能であることを示した例となる。
 
ネイチャー誌の解説によれば、2つのグループが解読に用いた[[w:デオキシリボ核酸|DNA]]は3万8000年前、[[w:クロアチア|クロアチア]]の洞窟に住んでいた一人の男性の骨から採取された同一のもの。それぞれに異なる手法を用いて解読を行った。ドイツのグループは100万塩基対、アメリカのグループは6万5000塩基対を解読した。ヒトのゲノムは32億塩基対であり、ネアンデルタール人も同様と考えられる。
 
ネアンデルタール人 ''H. neanderthalensis'' は[[w:ヒト|現生人]] ''H. sapiens'' と同じ ''Homo'' 属に属する。ネアンデルタール人は約3万年前ごろに絶滅した種であり、現生人とは同時期に生息地域が重なっていた。両種は進化的に非常に近い関係にあり、混血が起きていた可能性が考えられていたが、今回の報告によれば両種の交雑はおきていなかったという。両種のゲノムの相同性は99.5%であり、今回の結果とこれまでの知見を総合して考えると、両種が分岐したのは37万年以上前であることが示された。これまでの化石研究では20万年前と考えられていたが、それよりもかなり以前であることがわかった。今後の解析により、ヒトをヒト足らしめる遺伝的な特徴が明らかにされることが期待される。
 
[[Image:DNA_sequence.png|thumb|200px|塩基配列データの一部(画像:[[:en:User:Chris Dixon|Chris Dixon]]・資料)]]
2つのグループが解読に用いた[[w:デオキシリボ核酸|DNA]]は3万8000年前、[[w:クロアチア|クロアチア]]の洞窟に住んでいた一人の男性の骨から採取された同一のもの。それぞれに異なる手法を用いて解読を行った。ドイツのグループは100万塩基対、アメリカのグループは6万5000塩基対を解読した。ヒトのゲノムは32億塩基対であり、ネアンデルタール人も同様と考えられる。ネイチャー誌の解説によれば、化石からのゲノム解析はいくつもの困難があるという。DNAは比較的安定した物質ではあるが、非常に古いため断片化や欠損が起きている。また現存する生物のものとは異なり、サンプルの量が限られており、解読にはDNAの増幅を行う必要がある。全体をまんべんなく増幅し、しかも後から混入した生物のDNAを排除しなくてはならない。今回の研究グループはそれぞれ技術に工夫をすることで、化石からのゲノム解読に成功した。いずれの技術も、ヒトゲノムとの相同性により、他生物ゲノムの混入を排除し、ネアンデルタール人のDNA断片だけを増幅する方法を用いた。
 
ドイツのグループは、サンプルに含まれるDNAを高速に解読し、それらをヒトゲノムと比較することで、ネアンデルタール人のゲノム配列を特定した。この方法は他生物のゲノムも読み取ってしまい、解読にかかる費用が高くなる。アメリカのグループは[[w:メタジェノミクス|メタゲノミクス]]という分野で用いられる方法により、まずサンプル中のDNAを増幅し、その際にヒトゲノムとの相同性により、ネアンデルタール人のゲノムのみを効率よく選び出した。こちらの場合は増幅に手間がかかるため、解読までに時間がかかる。今回はネアンデルタール人ゲノムの一部が解読されただけであり、全ゲノムを解読するためには多大な費用が必要となる。
 
このように技術と費用の面でまだ多くの課題は残されているが、絶滅種のゲノムプロジェクトが可能であることを示したことは、[[w:進化|進化]]研究にとって大きな進展となる。ネイチャーは「古代[[w:ゲノミクス|ゲノミクス]]の誕生」というタイトルでニュース解説記事を掲載している。
 
== 出典 ==
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